20数年の漫画家生活で、かつて無いほどの大ピンチ
。
連載の合間に、描き下ろしの漫画をやっているのだが…上がらない(いつものセリフだが…
今回はマジで、危ない)
己が名誉のために、付け加えるが、けっしてサボっていたわけではない(天地神明に誓って)
今日編集が駅まで来て、出来ているところまでくれ…と言うので、なんとか5ページだけ渡す。
帰宅後、編集から怒りの電話「10ページって、言ってなかった?5ページしかないよっ」
だって5ページしか渡してないもん
私「全体を平行しながらの作業なんで、今回は5ページだけでお願いしますって言わなかった?」
平行って?どういうことだと問い詰められる。
早い話しが、全体の資料集めやコマ割りやワク線や…つまり全体を少しずつ進行中なのだ、
つまりペン入れをまとめて、仕上げをまとめて、パソコンへの取込みをまとめて…と言う具合だ。
上がるときはバタバタと上がるわけ(かな?)
私的に、それが効率的には一番早いのだが…工程の判っていない編集は
「出来たところからよこせ、これだとどう計算しても期日までに上がらない」と言う。
出来たところから少しづつ渡すことが、どれだけ効率が悪いか…言っても判っちゃもらえんな。
普通の漫画の編集さんは、セリフ、コマ割り、そこにはいる絵の説明
(このコマには、主人公が驚いている顔のアップと、背景に爆発の絵が入る…とか言う文字)だけで、
出来上がりを想像出来るものだが、漫画屋でない文字屋の編集は、そうは行かない。
下書きもラフ書きもキッチリと描いて見せてやらないと、そこにどんな絵が入ってどういう仕上がるか
想像出来ない…というか浮かばない絵が頭に浮かばない編集が多い。
するとどうなるかというと…簡単なラフ描き予定でも、相手が解るように、キッチリと仕上がりみたいに
下書きを入れてやらないとならない。それをいとも簡単に「このページ直して下さい。」と言ってくる
直し直しで、最終的には「こんな感じでやってくれませんか」と文字で書いてくる困った編集もいる。
だったら最初から「こんな感じで…」と言えば、その通
りにやってやるのだが
仕事の出来ない編集ほど、こんな感じのビジョンが頭に無いのだ。つまり…白い紙の上に何も浮かばない
何をどうするか判らないのだ…で、我々が描くと…そこで 初めて「ちがう」となる。
出来たものが無いと、修正案さえも出来ないというわけだ。
オマケに、漫画に不慣れな編集ほど、「ここまではこのままでいいんですが、このページだけ直して下さい」
とか言うわけだ 。そのページを直すということは全体を直さなきゃならないって事がわからないのだ。
そんな事はともかく、「どのくらいで全部あがりますか?」というので
「1日2時間の睡眠時間で、やり続けても10日」と言うと
「あと1週間だけしか無いから、 それで上がらないと発売日を変えねばならない」と言い出す。
だったら初めから、どのぐらいかかるか聞かなくてもいいだろうに。
ええ、この一週間で残り50ページを仕上げる計算です…これが、どのくらい大変かというと
サラリーマンや、OLが1ヶ月で終らせる仕事を、5日で上げると思って頂ければ、理解出来るでしょう。
帰宅しても寝る時間すらなく、原稿に向かっていると、また編集から電話。
「中間に入っている編集社の編集長が、どこまで上がっているのか心配なので様子を見に行くから」
と言い出す。
デジタル入稿は愚か、メールでの原稿のやり取りも出来ないような編集が
私のパソコンの中のデータを検閲に来るということらしい。
勘弁してもらいたい、15分だって惜しいこの時間に、どこかで待ちあわせて…
デジタルの素人に解るように、 データをプリントアウトして「はいここまで出来ています」と
見せて説明しろというのか? それこそが時間の無駄だろうに、よっぽど信用が無いらしい
しかし、その要求に応えているほど、今は時間がない。
な、訳で、その申し出は丁重に笑い飛ばした。
最終的に編集サイドは「ともかく上げてくれ、上がれば手抜きだろうがなんでも良い」と言う
学校の生徒に、よく言っている「漫画家は締め切りを守ってこそプロだ」が自分にここまで
シビアな現実として叩きつけられようとは┐('〜`;)┌
いいですか〜〜〜生徒諸君、時間に追いまくられて、生涯の汚点となるような…
納得のいかない原稿を上げる漫画家になってはいけませんよ。(今回はいつになく説得力があるな)
って事で、連載漫画の締め切りの方を、担当さんに頼み込んで1週間、延ばしてもらう。
今は描き下ろしがピンチなので、やむを得ない。
だから…ほとんど寝ないまま描き下ろし原稿を上げた後で、私に待っているのは…
待望の長い睡眠ではなく…連載漫画のキッツい締め切りということになる(T_T)
ネット仲間の女性から、陣中見舞いにアイピロー(冷暖用)を送ってらったものの…
当分、これを使ってゆっくり眠れる睡眠は取れそうもない。
では…10日後に生きていたら、また。