朝から何も食べない。 仕事の締め切りが2本重なり1本は今日渡す原稿のため
タロウの悲痛な声を聞きながら仕事。酸素を沢山吸ったあと、エサを与えるが嫌がる。
苦しいのと呼吸が乱れているので気管へ入ることを避けて、 無理強いは避けた。
しかし午後ちょっと調子が良さ気な、呼吸音だったので、すかさず好物のゼリーを出すが
食べたそうにも見えるが、舌も出さない。
絶対食べると確信して、注射器で口の端しから入れる。
嬉しそうに飲み込む、絶対嫌なときは「ぎゃ〜〜〜」と大声で叫んで拒否するので、
今回は欲しかったのだ。
しかし…それがタロウの最後の食事になった。
1時間後、悲痛な叫び声をあげて身体が硬直、クチを大きく開けてエビぞりになる。
ジロウはこの後すぐに逝った。
しかし…タロウはその後ふうぅう〜〜とため息をついて、また苦しそうに寝る。耐えた
昨日…私がファミレスに行っている夜中にも、何度か、こういう事が合ったそうだ。
さすがに家内も死を覚悟したらしい。
でもタロウは逝かなかった…可愛そうに…体力は人一倍ある奴だから…苦しんでいる。
パソコンに向かうが、気になるので酸素ボンベとチューブを仕事場に入れ
タロウをヒザに乗せたまま仕事をする。時より「タロリ!!」と声をかけると
弱った身体で「ウうう」と返事をしながら身を起こそうとする。
印刷に入るため、床に置く…しばらくすると、必死で敷物から這いだしながら鳴く
糞か排尿だとすぐ解る、尿だった…「バカだなあ、このくらいのオシッコは、寝ながら
していいのに…最後まで律義なタロウだ。
排尿を全て済ませたあと、またヒキツケを起こす。
それが昼過ぎから、頻繁におこりだす…今日3〜4度目
毎回今度はダメかと思うが…また頑張る、「もうがんばるなよタロウ」
編集が最寄りの駅まで来たと連絡が合った…さすがに1人にして置けない
家内が助手席で、抱きかかえて…駅に、車で向かう所要時間30分
途中で2回ケイレンとエビぞりを起こしたあと「あ」…と家内が言う
ため息を漏らし…タロウの身体からフッと力が抜けていった…
タロウが全ての痛みと苦しみから解放された瞬間だ…「逝っちゃったかタロウ?よかった…」
「家に置いてこなくて良かった…1人で逝かせなくて済んだ」信号が赤になった
まだタロウの身体は暖かかった。今にもまた復活しそうなタロウの手を握って
家内と私は黙り込む…
家内を目的地に下ろすまで、私は涙をこらえた…家内を降ろしてタロウとふたりで帰る道で
タロウの顔をのぞき込んだら、涙があふれて止まらない…「タロウのバカ野郎」
助手席のタロウに怒鳴る。「明日から締め切りの疲れを誰が癒してくれるの?
お前が逝っちゃったら、誰に夜中に話しかけるの? もう誰もいないじゃん…
ジロウ!!ハナコ!!タロウを連れて行くなって、あれだけ言ったのに…バカ!!!
タロウの腕と胸…まだ毛が生えてないけど…いじめるなよハナコ!!」
帰宅して、いつものところにタロウを寝かす…タロウの身体に顔を寄せると…
クチから空気が漏れて「キュウ」…と、いつものような、可愛い声が出た
でももう、横っ飛びで逃げないし、クククって人をにらみつけもしてくれない。
つまんないねタロウ。
もうハナコやジロウに会ったかな?
君らがいた8年間を、一生忘れない。
一番充実していて一番忙しかった8年間だった…パソコン生活がスタートして君らが来て…
こうして…私の8年間のフェレットとの生活は終った。