Kから聞いた真実

 

事実は、意外にも「なんだよ」ってくらいのものかと思い
Kの携帯に、大学のお昼休みに電話。
(夜、しかも自宅よりは、思い出さなくて済むだろうと…これでも気を使いました)

詳しく聞いてみると…やはりオオスジでは、前述のままのようですが…。
ここからはKの、証言を元に綴った詳細です。

「音楽でもかけて寝ろ」と父に言われたので、そうしたところ…真夜中に声が聞こえた
声と言っても、どこか遠くでざわつくような、かすかな音だ…どうやら音の発信源は
MDのアンプからだと気づく、ノイズに混じって…かすかに人の声のようなものが聞こえる
…女の人のように思えた。
止めようと、身を起こそうとすると…いつものごとく身体が動かない(金縛りだ)
顔の横に、気配を感じた…目だけは動くので、思い切って目を開けてみた。

女がいる!
息がかかるほどの距離に、女の顔…こちらをじっと見据えている。

2段ベットに寝ているのにも関わらず。上からのぞき込んでいるのだ。(出た…単純にそう思った)
ベットの高さから考えて…足場とか…台になるものは…Kは必死に考える。
脳みそと目玉しか動かせないのだ…結論として、 やはり足は完璧に宙にある、そう確信した。

女はなおも見ている、夢か…夢だ。そう思って目を閉じて、再びゆっくりと開けてみる。
同じだ…女はそこにいて、ただ見つめている。
薄手のピンク色のカーディガン、髪は肩くらいまでの伸び、顔はどこにも損傷の無い女の子だ
いや違う…

クチが無い!
鼻までは普通なのに口が…肌色のままで唇も歯も何も見えない、のっぺらぼうのクチのようだ。

そのまま目を開けて、閉じてを繰り返して朝を迎える…そんな日々が10日ほど続いた。
何日か続けて、女の霊を見たころ…
実家の父が「部屋に線香を立てて、盛り塩を部屋の四隅にしてから寝ろ」と言うので、
それを実行してみた。

しかし…相変わらず、夜中にのぞき込む女は現れた。
そんなある日、実家の姉が「ノイズの声を良く聞いてごらんよ、何を訴えているのかが
判るかもしれないよ」
と言うので
その日は、下の段(MDのアンプのそば)で眠りについた
真夜中、やはりノイズで目が覚める…目を開けると、毎晩訪れる訪問者がのぞき込んでいる
しかし…
今回は足が見える。足は床についており身体をかがめて、自分の顔をのぞき込んでいるのだ 。
スカートをはいている、足がある…ボケても透けてもいない、普通の人間のように見える。
ただ普通の人間は、鍵のかかった部屋に音もなく現れて、音もなく消えはしない。

「……み…ず……」アンプの中からかすかに、
そう聞こえた。「水」??
朝、実家に電話して「彼女…水が飲みたいのかもしれない」
そう言うと父が「水をコップに入れて置いておけ」と言うので、その夜はそうしてみる。

その夜から、金縛りはなくなり、女は現れなくなった。
怖かった…でも、 帰る場所も寝る場所も、そこ以外無かったので、我慢して寝た。

その近辺で、亡くなった女の人なのか、自分の身の回りの人なのか…考えた。
しかし…結論は出ない。

今は、時々思い出すけど…霊を見ているときは、恐怖感はそれほど無かった。
いったい、彼女はどこの誰だったのか?未だに判らないままだ
しかし…水はまだ、部屋の片隅に置いたままだと言う。

                     2004年10月15日(Kくん携帯にて談)

このお話しを「作り話だ」と笑い飛ばすか、「人知を超越した世界」の存在を信じるか
それはあなた次第です。私は、全てを悟った人間では無いので、後者を選びます。

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